就職先

 造園屋に就職した私は、早速4月から出勤した。零細企業なのでもちろん入社式などもないし、社員皆の前で挨拶したくらいだった。会社というより、建築現場の掘っ立て小屋と言った方が早い社屋の前で、怒鳴られながら荷造りをしたのが今でも刻銘に思い出される。
 その日は、運悪く会社の中でも一番口が悪い社員と組まされた。新入社員だからといって研修などというものもあるわけもなく、「○○取ってこい!バカヤローーそれじゃねーよ!」等という怒鳴りに耐えながら体で覚えていく感じだった。
 炎天下の中一日水まきをしたり、植樹をしたりしてへとへとになって事務所に帰ってくると、今日は月一のミーティングということで8時くらいまで会議に参加させられた。
 一日が終わって家に帰ると、本当に自分がこの仕事をやっていけるのか心配になった。大体の社員は造園をすることを誇りに思っていたのだが、私は土をいじるこの仕事が体も汚すし世間的に評価も低い仕事だったので嫌いでたまらなかった。でも、そんなことを言えないし、この進路を選んだのは他ならぬ自分なのだということを考えて堪え忍んでいた。