天才の思い出

 そういえば、昔実家にいた頃に天才の兄妹が居た。兄は旧帝大の医学部で、妹は旧帝大の理系で一流企業で研究職という立場。もっとも兄の方は若いときに医学部を中退して、開拓を始め必要の大きな所で頑張っていたが長老と揉めてつぶされてJWエリート街道をドロップアウトした人。妹さんの方も一流企業に身を置いていたが、急に仕事を辞して開拓を始めていたりしていた。
 まだ酒も飲める年齢ではなかったが、たまに彼らが一人暮らししている家に呼ばれて交わりをしたことがあった。兄の方は朗読も上手かったり、実に味のある注解をする人だったので私は大好きだった。
 酒が入っていなくても、集会後のKHでの雑談なんかでも率直にJWの疑問点を指摘したり、誤訳の部分についての話や、聖書のトリビア的な話をしてくれ、そういう話が好きな私はいつも仲良くしていた。
 その時は私も、真面目系で「自分が時々思う疑問は危ない考えだろう」と思っていたのでその辺の話は余りしなかったが、今思えばそのお兄さんも今の私などと同じ境遇だったのかもしれない。死海写本を読んだり、ギリシャ語聖書と英文比較したりしている方だった。JWの歴史についても造詣が深く、諸雑学にも通じていた。全てを調べたり解った上でなお逗留していたわけで、もし今出会っていたら、その訳というものを率直に聞いていたと思う。
 妹さんも負けず劣らずの頭脳明晰っぷりを披露してくれていたが、若干人格に問題があったのでなかなか親しくはなれなかった。風の噂に聞くところに寄れば、兄の方は今自然消滅したそうで、精神を相当病んで(その兄弟の)実家で引きこもりしているとか。妹さんは(私の)実家の近くの会衆に居て頑張っているが、性格は相変わらずだとか。
 今なら、その兄さんと色々話せる気がするだけに、人の出会いとその時欲している状況みたいなのは上手くかみ合わないなぁなんて思ったりする。