外堀からの攻防

Arlecchino2005-12-19

 結局、その母からのメールは無視してしまった。しかし、母が万が一いきなりこちらの家に乗り込んできたりしては困るのでそれとなく様子を探ることにした。実家に居る姉に母の様子を聞いてみた。すると、あなたが集会とかのメールにはいっさい返事を返さないから心配してるんだよ。集会に全く行ってないんじゃないかってよく言ってるよ。という返事が返ってきた。やはり私の予想通りで集会に行っているか不安でメールしてきたようだ。
 それから少し考えてしまった。この間の彼女の事もあったし、もしこのまま生きていくならばいつかは決別をしなければいけない。それは早いか遅いかの違いだけでもたらす結果に大差はない。母を傷つけずにJW人生に終止符を打つことなどできないだろう。できることならなるべく周りに負担をかけずに決別していきたいので、排斥という形は取らない方が良いかもしれない。一番後腐れがない辞め方といえばそうなのだが、それは家族との交流も裁つならばの話であって、今後も家族と交流していきたいのならばこの選択肢はまずない。
 そんなことよりも直近でどうにかして母を抑えなければならない。と、そんなことを考えているとき父から電話が来た。父の電話の内容は他愛ない話から急にJWの話に移った。相変わらずカモフラージュが下手な父である。ついつい笑いながら

母さんに頼まれたんでしょう?

と問うてしまった。父はいかにもという感じで、少し笑いながら「そうだよ」と答えた。せっかくだったので父に、一切合切を話してしまった。JWについて思っていること、自分の信仰。現在の状況、これから取ろうと考えている進路など。殆どが母に聞かせたら卒倒しかねない話ばかりだった。そんな話を終えると父は

もう子供じゃないからな、お前が考えて決定していけばいいよ。

と優しく一言言った。やはりこの人はバランスが取れている人だ。長い期間JWに晒されながらもある一定から先は絶対にJWの世界に入ろうとしない。今更ながら母のような性格の父でなくてよかったと思う瞬間だった。それから父と少し雑談をしたが、父は概ね私の意見を汲みとってくれたようだ。やはり、こういう話は男とするに限る。女性はどうしてもこういうことに感情的になってしまう嫌いがある。父には母を窘めてくれるようお願いして電話は終わった。
 まず、外堀の一角は埋まった。次は他の兄姉達だ。もっとも兄姉は二世であるし、それほど真面目なJWでもない。説得も難しくはないだろう。いきなり誰にも相談せず事を起こすとびっくりしてパニックになるが、こういう感じで徐々に徐々に詰めていくことで大騒ぎせずに消滅への道を辿ることができそうだ。